低リスク患者が低リスク手術を受ける場合でも、日本の多くの病院では心電図や胸部レントゲンなどの術前検査をきちんと行っていると思います。
ウチの病院でも同様で、麻酔科管理下に行われる手術では心電図、胸部レントゲン、血算・生化などの検査は必須となっています。
ところが海外は事情が異なるようで、各種ガイドラインにより低リスク患者が低リスク手術を受ける場合は術前検査は不要とされており、今日、私が読んだ論文 (Hall A, et al. PLoS ONE 2022; 17: e0278549) は、それでも一部 (17.9-35.5%) の症例では依然として検査が行われているのはなぜか、ということを調べたものでした。
この研究によると、不要とされているのに検査をするのにはいくつか理由があり、誰が検査のオーダーに責任を負うかが明確でない、同僚と相談ができない、検査していないことにより手術が中止になりうる懸念などが挙げられていました。
検査をするべきかやめるべきか、カナダで臨床の最前線に立つ医療従事者の困った顔が目に浮かぶようですね。
そういう意味では、術前検査は必ずやるものと決めているわが国の方が、医療従事者の精神的プレッシャーが少ないと言えるのかもしれません。