9 個の非心臓手術後の AKI 予測モデルについて外部検証を試みた Zhuo らの研究 (Br J Anaesth 2024; 133: 508-18) については、以前、私のホームページ でも紹介しました。
今回、文献検索をしていて、たまたまこの論文に関連するエディトリアル (McIlroy DR. Br J Anaesth 2024; 133: 476-8) を見つけたので、紹介します。
このエディトリアルでは、予測モデルに関する一般的な利点と考慮すべきことがらについてまず述べられており、とても教育的な内容になっているように感じました。
ネガティブな結果に終わった研究はとかく軽んじられがちで、アクセプトさえままならないことが多いと思うのですが、この Zhuo らの研究のどういった点が優れているのか、そしてこの結果から何を学ぶことができるのかといったことについても述べられています。
このエディトリアルで私が最も役に立ったと感じたのは、予測モデルを扱う上での AKI の特殊性に関する記述です。
予測モデルには多くの運用法がありますが、どの患者を対象に介入を行うかを決めることに使うというやり方があるということです。
ところが KDIGO care bundle にしても、輸液の投与のしかた(制限的 vs リベラル)にしても、現時点で有用とされている介入に対してわざわざ患者選定を行うほどのこともない、ごくごく一般的な介入しかしていないというのが、AKI の特殊性だというわけです。
予測モデルのもう一つの使い方として、医療従事者や患者が、例えば手術を受けるか受けないかといった決断をするのに役立てるというやり方もあります。
ところが現状では患者が退院時に、実は術後 AKI だったということを必ずしも知らされていないということもあり、AKI の認知度が今ひとつということも、予測モデルの活躍の場が限られている要因の一つとなっているようです。