2024年5月31日金曜日

【土曜日勉強会】抄読会 --- いわゆる「ちゃんぽん麻酔」による制吐効果

 今日は第一土曜日なので、抄読会が行われました。 

The effects of virtual reality neuroscience-based therapy on clinical and neuroimaging outcomes in patients with chronic back pain: a randomized clinical trial
Pain 2024 担当:Y 先生

慢性腰痛に対する virtual reality neuroscience therapy (VRNT) が有効だという報告でした。
その一方で、THA 術後には無効だったという報告もあるそうで、最近のホットな議論の的のようです。
また、VRNTは急性痛よりも慢性痛で有効なようです。
どうも、痛み以外に気持ちを向ける (distraction) というのが、この治療法に関連するキーワードみたいですね。
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Effect of propofol infusion on need for rescue antiemetics in postanesthesia care unit after volatile anesthesia: a retrospective cohort study
Anesth Analg. 2024 担当:T 先生 

手術中のプロボフォール持続併用投与により、PACU でのレスキューの制吐薬の必要性が低下することを示した研究です。
術中のプロポフォール投与量は PACU におけるレスキュー制吐薬の必要性と関係していましたが、100 ug/kg/minを超えるとそれ以上の効果はなかったということです。
副次的評価項目の一つとしての回復時間には、影響はありませんでした。
100 ug/kg/min は 6 mg/kg/hr に相当するので、H教授からは、この用量と効果との関係は、術中の揮発性麻酔薬との減少効果と関係があるのではないかとのコメントがありました。
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 2番目の論文で思い出されるのは、留学中に出会ったカナダの麻酔科医で、呼吸器外科の麻酔中にデスフルランと同時に少量のプロポフォールを持続投与していました。
 なぜ両方投与するのかと尋ねるとプロポフォールによる制吐効果を得るためとのことでしたが、その麻酔科医の評判は決して芳しいものではなく、同僚たちからは「あんなのが効くわけない」と陰口をたたかれていました。 

 しかしあれから 10 年以上のの月日を経て、いわゆる「ちゃんぽん麻酔」の効用が堂々と A&A に掲載されています。
 片肺換気中の dependent lung への PEEP や吸入麻酔(vs. TIVA)の議論もそうですが、いつどのように評価が覆るかわかったものではありません。
 逆に、だからこそ学問はおもしろいものなのだと言えるのかもしれませんが、恐ろしいものでもあるように感じます。

2024年5月21日火曜日

【文献】屈曲の強い気管で注意すること

 高齢女性の cadaver を用いて、屈曲の強い気管における気道管理について検討した論文 (Inoue T, et al. Cureus 2024; 16: e55546) を読みました。

 この研究では cadaver から気管を切離して気管チューブを通しており、その結果、先端が気管壁に当たってしまい、挿管中の人工呼吸が困難になることが示唆されたということでした。

 ここまでなら臨床でもしばしば見かけることなのですし、そうならないように麻酔前の評価が重要だと思うのですが、この症例ではさらに腕頭動脈が気管の前を横切っており、気管切開の際には大量出血のリスクがあるということでした。

 結論として、麻酔の前には気管と頸動脈の解剖をチェックすべしと述べられていました。

 麻酔前にルーチンで頸動脈の走行までチェックするということはしないと思うのですが、少なくとも気管の走行が異常な場合には、血管系のチェックも合わせて行うことが必要なのかもしれないと考えさせられました。


2024年5月10日金曜日

【文献】指標どうしの相互作用

 心臓手術後の AKI を予測する血行動態の指標について検討した論文 (Demirjian S, et al.  Crit Care Explor 2024; 6: e1063) を読みました。

 低い平均血圧や高い中心静脈圧が心臓手術後の AKI の予測因子であることなどはすでに多くの研究で示されていますが、それらに加えて指標どうしの相互作用について調べられている点がこの研究の大きな特徴として挙げられると思います。

 例えば、低い平均血圧と高い中心静脈圧の組み合わせは AKI の発生に対して相乗効果を示すとか、心拍数が高いことが低心拍出量患者における AKI のリスクを高める、といったぐあいです。 

 最近の周術期 AKI 研究の特徴として、「腎内の血行動態」や「個別化」がキーワードとして挙げられますが、「指標どうしの相互作用」もキーワードになりうるのではないかと考えさせられました。

2024年5月1日水曜日

円安での APC

 最近、円安が大きな問題となっており、テレビでも特に海外旅行客がインタビューを受けているのを目にすることが多くなっています。

 自分は海外旅行はしないので、円安の影響はそんなに受けないと思っていたのですが、APC (Article Processing Charge) を支払う上で多大な影響を受けることに、今日、気がつきました。

 投稿論文が受理されて出版されるのはありがたい限りですが、研究費が円安の影響で目減りしてしまうのには複雑な気分です。

医科歯科のままでした

 今日から「東京科学大学」の看板がかかっているのかな・・・と思ったのですが、今朝の時点ではまだ「医科歯科」のままでした。  看板を変えるのも、お金がかなりかかるんでしょうね。