開心術を受ける患者において、腎機能が術前に改善する患者では術後 AKI のリスクのみならず、AKI の重症度も高くなり、しかも期間も長引く、という論文 (Jiang B, et al. Sci Rep 2025; 15: 27933) を読みました。
私の AKI 論文コレクションのどれにも当てはまらない、ものすごく新しい、というか変わった発想のもとに行われた研究であるように思われます。
血清クレアチニン濃度の変化を転帰に結び付ける発想は、これまでにもいくつかありました。
例えば、「術後 AKI の後に血清クレアチニン濃度が完全に回復しても、非 AKI 患者よりも転帰が悪化する」とか、「AKI から回復する期間が長いと、転帰がより悪化する」などです。
しかしこれらはいずれも AKI の後の経過であって、術前のものではありませんでした。
残念なのは、術前の腎機能の改善と転帰の悪化を結び付ける理由として、バイオマーカーとしての血清クレアチニンの不完全さが挙げられている点です。
腎機能を正確に反映するバイオマーカーがあってこそ質の高い研究ができるわけで、新しい、簡単に臨床で使える、精度の高いバイオマーカーの開発が待たれるところです。