最新の研究というわけではないのですが、膀胱全摘術中の低血圧が術後の AKI に与える影響に関して調べた論文 (Löffel LM, et al. J Clin Anesth 2020; 66: 109906) を読みました。
手術中の平均血圧に 3 種類の閾値 (55, 60, 65 mmHg) を設け、それぞれの閾値を下回った時間の累計と AKI の発生との関係を調べるのが主たる目的で、それぞれの閾値を下回る血圧が1分間長くなるごとに AKI のリスクがおよそ 1~1.2% 増加するということが示されていました。
400 人以上の患者さんについて、A ラインから得られた血圧を 1~5 分おきに記録したものを分析したということですが、これを厳密に行うにはたいへんな努力を要したことと思います。
多くの施設では生のデータを永久的には残さずに、画像データのような形で残すのが常だと思いますので、血圧を数値データとして残すのは工夫を要したことと思います。
ちょっと気になったのは、この研究では制限的な輸液管理を行っており、硬膜外などのために血圧が低下傾向となるのに対してノルアドレナリンを使用していた点です。
最近の流行とはいえ、こういった管理が比較的高い AKI の頻度につながっていたのではないかと考えずにはいられませんでした。